どういうことかな?


ポカポカ暖かい春のある日。とある家族のお話です。


「今まで黙ってたけど・・・・お前はウサギじゃないのよ」
暖かな春のある日、突然僕に告げられた言葉はあまりにもショックなものだった。
「えっ、どういうこ・・・・」
「お兄ちゃん、ウサギじゃなかったんだ」
僕の言葉をさえぎって弟が言った。
「お前は黙ってろ!」
僕は強い口調で弟に文句を言うと、母さんの方を見た。
「お母さん、僕がウサギじゃないってどういうこと?お父さんもお母さんもウサギじゃないの?」
僕の質問に父さんはこう言った。
「何言ってるんだ。父さんも母さんもれっきとしたウサギだ。ふわふわもこもこのかわいいウサギだよ」
(・・・・お父さん、自分でふわふわもこもこのかわいいウサギって・・・・)
僕は口には出さなかったが、心のかなで突っ込んだ。
「・・・・そんなこと言うなら、僕だってふわふわもこもこのかわいいうさぎだよ。耳だってしっぽだってちゃんとついてるし」
僕は耳としっぽを指差す。
「それはね。お父さんとお母さんがくっつけたのよ。お前のことを不憫に思ってね」
「くっつけた・・・・って、ぬいぐるみじゃないんだよ!」
「わーい。お兄ちゃんぬいぐるみだー」
弟は楽しそうに言った。いったい何が楽しいんだ。
「だから、お前は黙ってろ!」
僕は先程より強い口調で弟に言った。
「とにかく、お前はウサギじゃないのよ」
僕にとどめを刺すかのように母さんが言った。
いったいどうなってるんだ?僕には何が何だか解らないよ!もう・・・・いっぱいいっぱいだ!
「!!!!」
僕は声にならない叫びを上げると家を飛び出した。
「あっ・・・・ちょっと、朝ごはん・・・・って言うかにんじん食べないの?」
遠くから母さんの声が聞こえた。
『ニンジン』という言葉に少々惹かれたが、僕はそのまま走り去った。


「はぁ・・・・。僕ってウサギじゃないのか・・・・」
川に写った自分をみなからため息混じりに呟く。
自分で言うのもなんだが、誰がどう見たって僕はウサギだ。ふわふわもこもこのかわいい・・・・わけじゃないかもしれないけど僕はウサギだ。
「はぁ・・・・」
僕は再びため息をついた。

「これからどうしよう・・・・」
僕は呟いた。
日がかなり高く、真上近くにきてるから、結構時間が経ってるようだ。
「う〜ん」
僕はしばらく考えた。そしてふと、ある話を思い出した。
「そう言えばこういう話を聞いたことがあるぞ。ええっと、たしか・・・・タイトルは解らないけど、周りの仲間とは違う顔でかわいくなくって、
ええっと、そのことでいじめられてたんだよね。そうそう、ず−っと思い悩んでて・・・・ああぁ、何だか僕みたいだ。でも、いじめられてないだけましかな?
それで・・・・その話の主人公は最後、自分の仲間を見つけてめでたしめでたし・・・・だったかな。あっ、しかも成長するとすっごく素敵になるんだったよな」
僕はむちゃくちゃな感じがするけどある話を思い出していた。
「・・・・」
僕はしばらく考えた。そして・・・・
「よし、ウサギじゃないって事実はどう頑張っても変わらないんだから、いまさらくよくよしたって仕方が無い。ポジティブにいかなきゃ。
よーし、こうなったら僕も自分の本当の仲間を捜そう!そして、いったい僕が何者なのか自分を捜すたびにでよう!」
まるでお話の主人公になったみたいだ。
「そうと決まれば、さっそく家に帰って準備だ!」
僕はさっそうと駆け出した。

僕が駆け出すとまるで僕を後押しするかのように風がふき、桜が宙を舞った。


「何処に行ってたの。もうお昼過ぎよ。ちゃんとお昼までに帰ってこなくちゃダメでしょ」
家に帰るなり僕は母さんに叱られた。
そう言えば、朝から何も食べていない。だけど、今は食事どころではない。
僕は母さんを見た。
「・・・・あのね、お母さん。僕・・・・旅にでる」
「?」
「僕、自分を捜すたびに出るんだ!そして本当の僕の仲間を捜すんだ!」
「・・・・?何言ってるの。本当の仲間って、あなたウサギじゃない」
「えっ?」
「えっ?じゃないわよ、まったく・・・・。何処をどう見たってウサギじゃない。耳だってしっぽだってついてるし・・・・」
どういうことかな?
「だって・・・・さっき耳やしっぽはくっつけたって」
「じゃあ聞くけど、耳やしっぽ動かせる?」
僕は言われたとおりに耳やしっぽを
動かしてみる。
「ちゃんと動くでしょ?くっつけたものなら動くわけ無いじゃない。お母さん神経つないだりできないわよ」
僕は何が何だか解らなくなってきた。
「だって、朝、お前はウサギじゃない・・・・って」
「ああ、あれ」
母さんはそう言ってくすくす笑った。
「カレンダーをよく見てみなさい」
僕は言われたとおりカレンダーを見る
『4月1日』
カレンダーの日付はそうなっている・・・・って4月1日!?」
「エイプリルフール!」
僕は思わず叫んだ。
ということは・・・・
僕は3人の顔を見た。3人とも笑っている。
「・・・・騙された・・・・」
僕はボソッと呟く。
僕は・・・・僕は・・・・一生懸命悩んでたのに!
「もしかして・・・・本当に信じてたの?」
僕の様子に気づいて母さんが訪ねた。
「悪かったな。まさか・・・・その・・・・本当に信じるなんて思ってなかったし」
父さんが言う。
「お兄ちゃんのドジ!」
笑いながら弟が言う。
「・・・・」
僕はこみ上げてくる怒りを抑えきれず叫んだ!
「エイプリルフールなんて嫌いだーーーー!」

END


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